イスカリオテのユダ

あまりにひどいめにあって、やっぱり眠れない。


あたしはイスカリオテのユダについて考えていた。ダメなところがたとえほんの小さな面積であったとしても、それが決定的なダメだったらダメだ。それは、人と人がいて、唯一大切なものだったのではないのか。「生まれなかったほうが、その者のためによかった」とは思わないけれど、あんなもんじゃたりない、もっと落ちなければ浮かぶことなどできないのだろう。あたしがイエスだなんて口が裂けてもいわないけどさ。


たしかに、あたしは裏切りを予知していた。もともとある人間不信や人嫌いを超えようとするたびに、なぜこうなるのだろう。これが誰かからのメッセージなら、あたしは守られるべきであるような気はしてきた。


あたしが感じたふるえるような怒りや恐怖のすべてが力になりますように。甘っちょろいかもしれないけれど、これでなにもかもをあきらめたくはない。


人の目や言葉のなかにあるなにか、その人間に対する感情。そういうものをもっと大切にしなければ。今度同じようなことがあったら、この体験の話をして、断るのはいいかもしれない。もともとあんたのためになんないとはいっていたのだから。


そう悪くはないけれどゆがんだ環境にいて、それを嫌悪するというスタンスではまちがえる。それも昨夜、口にしたのだ。


うけいれることが、ちっとも相手のためになんない。こんなに甘ちゃんの言葉にぶらさがる甘ちゃんだらけなら、たたきなおしてやる。そのほうが、大切なものをその人は失わずにすむだろう。少なくとも、勝手に人の陣地に入ってくるなら。ということさえ、世界情勢に置き換えて考えてしまう。自衛について考える。やはり連帯だ、などと思う。ただし、こんななら、ひとまずは信頼関係を築けてつながれる人とつながって互いを守る、ってことだ。昨夜もSOSにこたえてくれた人がいた。「なにかよこしても口にするな、なにかあったら多少は刺したっていい」といってくれた。これは今思えば的確なアドバイスだ。土下座に刺すタイミングを失ったけど。あたしはもっともっと自信をもっていいかもしれない。少なくとも、裏切りを確信するために2つの段階をもうけておいたことは、判断の大きな指針になったし、心の準備もできた。


いいたかったことを1つは口にできたのはよかった。あたしがいいたかったことでここに書けるのは、「真に重要な約束を破ったら相手をどんな気持ちにさせるかを思い知れ」「軽く考えているかもしれないけれど、軽く考えていると思っていたかもしれないけれど、特定の行為が相手を深く傷つけるということを知っておけ」ということか、あとは、「なめんな」ってことだ。なめられないために脅す、というと世界情勢なら核爆弾か。それは好みではないから、とにかく信念をきっちり伝えておくようにしよう。もっと当初の段階で。ぺらんぺらんの自負があたしの半分もないやつがこんなにも多いのか。そこにむなしさはないのか。約束を守らせるために、システマティックな対応をしておくというアイディアもあるか。強引にでも。あたしには向こうに対する借りも落ち度もいっさいないし。


明日実家に変える予定なのだけど、実家から二度も連絡が入った。なにか虫があっちにしらせたんだろうか。なんもせつめいしてないけど。


今度現れたら絶対につきだす。これがあたしからあたしへの約束だ。10年ぶりくらいの強い怒りと恐怖とを忘れてはならない。風化させるな、ってやつだ。そろそろ眠れるだろうか。1つ具体的に勉強になったことはあったし(判断材料を得た)。珍しく泣きたい気分だが、泣けねぇなぁ。過剰に冷静で。