「縛師」「南部や」「替り目」

 今回も気ままに綴らせていただきますので、おつきあいのほど、よろしくお願いいたしますね。


 最近、さまざまなあれこれのしくみに興味がある。
 先日、「縛師」という映画を観た(ネタバレあり)。廣木隆一監督の『ヴァイブレータ』を観ていたことと、伊藤晴雨団鬼六谷ナオミにも関心があった。だけど、縛られたいとゆう願望が強いわけでもなかったので、そもそもなんでそうゆうひとびとに関心があるのか自分でもわからなかった。
 作品では、緊縛師の職人的で美しい、鮮やかな手さばき、小股を掬って一息に吊るなどの技を堪能。「優しく抱きしめるように」縛るという緊縛師の話があったりM女は注文があるからSでもあるわけで逆に女王さまはとてもやさしいとか、虐待を受けていた経験から痛めつけられていないと生の実感がわかないとか堕ちたいとか開放されるときにさびしさを感じるとかかかわるひとびとのいろんな語りがあった。そこでなるほど自分の闇や病みがタナトスを信じるのであろうとか、そこまで具体的なつながりが自分ではわからないなあとか考えた。だからちょっと調べてみた。
 以前からその歴史的背景として江戸時代の拷問刑罰史があるとかいうことは知っていたけど、ミルグラム実験アイヒマンテスト)やスタンフォード監獄実験とのからみについて考えた。役割を受け入れようとする順応性。どうだろうか。そこでさらに脳内麻薬について調べてみた。やはり苦しみが快楽に転じる瞬間というのがあるのだろう死の痛みを転じるために。
 いずれにせよ、こうした体験の向こうに涙を流したりむせび泣くほどの自己開放や快楽や癒しのあることは驚異的であった。また、「100人いたら絶対に縛ってほしい人が10人、絶対にダメな人が10人、70人くらいはグレイゾーン」というような話があり、そのちがいはなんであるのか、異常性欲や正常性欲とはなんであるのかなどについても調べたうえで考えあわせる。また、縛られると本当に美しさが引き出される彼女たち、それは感情や感性がむき出しにされるからであろうかなどとも思った。
 個人的には人生のなかで最も「肉体的に」つらかったのは幸いにも中高の部活動のさいちゅうくらいであって、周囲がばたばたと倒れていくなかでも基本的な体力のあるあたしは倒れたくても倒れられず、発狂したふりをしたことがあった(まあふりする時点である程度狂ってると思うんだけどね)。このような部活動のおかげでも精神的な苦しみを相当やわらげていたはずである。で、チビなあたしはよく蹴り飛ばされていた。これはもうまったく痛みを感じなかった。家庭で虐待を受けていた子は本当によくボコボコにされて傷だらけになったり首がまわらなくなってギブスをしたりしていた。現代では問題になるだろうが、当時はまだまだよくみられる例だったろうと思われる。1日4回の稽古があった合宿などでも、かなりヤバい脳内麻薬が出ていた。特に女性は実感よりも限界はまだまだ先にあるとかいわれていて(本当だろうか?)、ある種の限界を超えるともう何も考えず何も感じずに体だけが動いて気持ちよかった。
 こうした肉体的な多少のつらさや精神的な不安や恐怖からくる脳内麻薬の快楽に加え、この映画では特に想像力のたくましい人に縛られたい人が多いという話もあったので、なるほどとうなった。本当に人間の本質についていろいろ考えさせてくれる映画であったことよ。知らないことやみえないものを知ったりみたりするのは本当に勉強になるなあ。


 さてもさても。


 今日、おニューのスティールパンのマレットを使った。片方なくしてネット購入。今度のは軽い。音がランランする。特に青空の下。で、テナーパンのマレットはどうやら、やわらかめが外周のより低音域向き、かためが内周のより高音域向きであることが判明。マレットで音がまったく変わるので、ぜひいろいろ取りそろえることをおすすめいたします。自作にもチャレンジしてみたいがドラムスティックのおしりにゴムをつけて失敗したので研究が必要ですな。
 でもって我がバンド名は金子光晴の詩集タイトルより命名した「落下傘」をスタジオ帰りによく通っていた秋葉原の飲み屋「蒼竹庵」に変えていたのであるが、それを同じく秋葉原の「南部や」に変えようという提案。こちらは岩手のお酒に珍味盛りだくさんで、よくいただくのがカンガルーの串焼き。今日はこれに加えて七面鳥の串焼きや白い馬刺しなどもいただく。店員さん重視派のあたしはここのマスターに対しても勝手にファンです(お写真あり)。秋葉原にお立ち寄りの際はぜひ。いや、本当はあんま教えたくないくらいですけど。


 さてもさもてあれ?さても。


 渋谷TSUTAYAで音楽CDとともに志ん生の3枚組を借りまして。随筆などは読んでいたんですが、はじめて志ん生落語を聴きまして。あたしゃ「替り目」てぇやつが好きでして。もとは上方落語みたいですが、サゲをカットしたりしているみたいですね。どなたかくわしくご教示くだされば幸いです。まあ、酔っぱらいの旦那と車屋とのからみがあって、目の前の自宅に帰宅してから女房につまみを寄こせとこの亭主は繰り返し、女房への感謝の独り言、そこにまだ外出していない女房がいた、というような噺でして。YouTubeにインタビュー等の画像がありますね。