2006-09-12 石垣りんさん 『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』より「家」から きんかくし 家にひとつのちいさなきんかくし その下に匂うものよ 父と義母があんまり仲が良いので 鼻をつまみたくなるのだ きたなさが身に泌みるのだ 弟ふたりを加えて一家五人 そこにひとつのきんかくし 私はこのごろ その上にこごむことを恥じるのだ いやだ、いやだ、この家はいやだ。