『初舞台 彼岸花』里見とん

 読了。先日の続きの感想つか引用。『みごとな醜聞』より「〜そう思うと同時に、哀れとも、悲しいとも、恋しいとも、いずれとも片づかない、一種、胸苦しい気持になり、果は、するすると、涙まで頬へ伝った。胸苦しいながらも、結局それはいヽ心持だったのに、その「いヽ心持」が、急にまた莫迦らしく、腹だたしくなって来た。強いてそっちへ気持を曲げると、──ざまアみやがれ! いヽ気味だ! そうも思えた。」、『初舞台』はユーモラスなオチ、ひょうひょうとした登場人物が好ましい。『彼岸花』は「幸福」と書いて「しやわせ」というルビを愛す。「畳一帖ではきかないほどの文卓(デスク)に置かれた電話器が、思わず顔を顰めそうな応酬(やりとり)も、どうやらそこで鳧がついた。」とか、婿探しの話で「あとはテレビの「今日の献立」に出る講師の口調を上手に真似て、「至極、簡単でございますから、どうぞ一度お試し頂きましてて……」」とか、くすりとさせられてしまいますです。有島武郎がお兄さんだったのだな!コレが。