たくましく生き、そしてそれぞれに何かを追いつづける映画4本

牛乳屋フランキー (1956)

【監督】中平康
【出演】フランキー堺 / 坪内美詠子 / 毛利充宏 / 小沢昭一 / 市村俊幸 / 利根はる恵 / 水の江滝子 / 岡田真澄 / 西村晃 / 織田政雄


★★★☆ [70点]「ドタバタとおおらかさと。」

 小沢昭一氏のトークつきで観ました。フランキー堺は中学時代より只者ではなかったということが証明されるようなエピソード満載、抱腹絶倒の秀逸な話芸。

 作品は、フランキー堺演ずる堺六平太が、たくさんのポケットをつけたエプロンで牛乳を配達したり、ついでに酔っぱらいの旦那や恋文を届けたりなど、飽きさせません。お約束のドタバタの連続に、ドリフ世代の私も笑いを満喫。堺小五郎との二役も。

 当時のおおらかな人情も随所にかいま見られ、幸福感を得ました。


Posted by lotus.eater on 2008/06/14 with 映画生活
幕末太陽傳幕末太陽傳 (1957)

【監督】川島雄三
【出演】石原裕次郎 / 左幸子 / 小林旭 / フランキー堺 / 小沢昭一 / 南田洋子 / 芦川いづみ


★★★★ [80点]「笑いながら人生について考えさせられる怪作」

 1999年、キネマ旬報の「オールタイムベスト100日本映画編」で5位ということと、友人のすすめもあり、劇場に足を運びました。

 やはりフランキー堺のドタバタコメディが好きなのはもちろんですが、脇に回った高杉晋作石原裕次郎の前身から発せられる鼓動、とっくみあいのけんかも辞さない遊女や花魁たちの奔放な魅力+計算高いところ、愛する殿山泰司の存在なども特筆に値するのではないかと感じます。女だてらに遊郭への憧憬もあったりするのですけれど。そして、いのさんが知恵と行動力と勇気とをフル活用してたくましく立ち回り生きるのみならず、テーベーを思わせ胸を患っているのもすばらしい。笑いながらいつの間にか人生について考えさせられてしまいます。

 フランキー堺の映画を観ると、ぜひ使ってみたいと思う台詞があり、この作品では特にラストの台詞でしょうか。また、あの幻のラストネタなど、この1本のなかに話題が盛りだくさんです。


Posted by lotus.eater on 2008/06/14 with 映画生活
ザ・マジックアワー (2008)

【監督】三谷幸喜
【出演】佐藤浩市 / 妻夫木聡 / 深津絵里 / 綾瀬はるか / 西田敏行 / 小日向文世 / 寺島進 / 戸田恵子 / 伊吹吾郎 / 寺脇康文 / 谷原章介 / 中井貴一 / 鈴木京香 / 香川照之 / 天海祐希 / 唐沢寿明 / 甲本雅裕 / 梶原善 / 近藤芳正


★★★★ [80点]「三谷節とたくましく生きる人間の姿とを堪能」

 三谷節満載とゆうか、隅々まで親切とゆっても過言ではないほどにユーモアがちりばめられていて、いつの間にやら作品に引き込まれ、先の展開を考えるのも忘れて大笑いさせられてしまった。

 これもまたドリフにも似た、まさに「うしろうしろっ!」ってやつだろうと鑑賞後に友人と語り合う。私は構造を知ってる。これがもうたまらなくおもしろい。

 ただし、私が映画に求めるものとは多少異なるので評価はそれほど高くはないといえるかもしれない。でもでも結局、知恵と勇気とを振り絞ってたくましく生きるひとの姿、好きなことに無条件に没頭していく姿、そういったものを見守る快さもあった。「幕末太陽傳」を観た直後だったこともあり、重なるものを感じた。


Posted by lotus.eater on 2008/06/14 with 映画生活
シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録 (2007)

【監督】大島新
【出演】唐十郎


★★★★ [80点]「なんだかとても唐さんの気持ちがわかるような気がして。」

 情熱大陸に引き続き、大島新監督が手がけた唐十郎と唐組の貴重な記録。そこに映し出されるのはときに閉鎖的と思われるほどの濃密な生活と稽古と芝居のさまだ。唐十郎はペンの走るリズムで原稿を書くといい、ときに酔いどれ、ときに怒鳴り、その直後に両手を広げて受け入れたりする。若手の劇団員のなかには年収10万円、家賃1万円台などという強者も。そして、「あて書き」といわれる役者を想定して本が書かれ、役が与えられる日を夢見る。

 だが、よもやあのシーンが「虚」であったとは! と驚愕の、全編まさに「虚実入り混じる」作品。それは唐十郎と唐組の性質をも表すものであり、シアトリカルとは「演劇的な」を意味する言葉なのだ。

 トークショーでは大島新監督と藤井由紀さんが登場。藤井由紀さんに見覚えがあると思っていたら、『実録・連合赤軍』に出ていらっしゃったのですね。私と同行者はこの『シアトリカル』にも思わずあの山荘の風景を思い浮かべてしまいましたが、ここにはユーモアやひととひととのふれあいがあることが大きなちがいなのですよね。

 個人的には、周囲は笑うも私はなんだかとても唐さんの表現に対する気持ちなどがわかるような気がして笑えない、これは真実なのだ、などと感じることも多々あり。本当に貴重な記録でした。


Posted by lotus.eater on 2008/06/14 with 映画生活