時代を読む?!映画5本

 最近劇場で観た映画のテーマを設定するなら「時代」かと。

婦系図(総集編)』
婦系図(総集編)
公開:1942年
監督:マキノ雅広
主演:長谷川一夫山田五十鈴高峰秀子古川緑波、村瀬幸子、三益愛子、山本礼三郎
かつてスリをしていたドイツ語学者・早瀬と、売れっ子芸者の・お鷹。幼なじみであった二人は結婚するも、学問の邪魔になると、恩師に別れるように迫られる…。『昨日消えた男』、本特集で上映の『幽霊暁に死す』など多くの作品でコンビを組んだマキノと長谷川一夫であるが、中でも男女の悲恋を情緒たっぷりに描いた本作は白眉の出来と言われている。

ヒロインが自らの学のなさを卑下するのが不憫であった。早瀬の恩師の娘の母親も芸者仲間であり、ドラマティック。青空文庫で読めます。婦系図はてなキーワードもご参照ください。「別れろ切れろは芸者の時にいうことば」の元ネタですね。

『すっ飛び駕(16mm)』
すっ飛び駕(16mm)
公開:1952年
監督:マキノ雅広
主演:大河内伝次郎、黒川弥太郎、河津清三郎、三浦光子、長谷川裕見子、伏見和子、南条新太郎、沢村国太郎、荒木忍、東良之助、光岡龍三郎、原聖四郎
新聞連載小説を伊藤大輔脚本、マキノ雅弘監督、大河内伝次郎主演で映画化した娯楽時代劇。坊主を名乗るが実はヤクザな河内山宗俊が、金子市之丞を救うお話「天保六花撰」の一席。単なる悪でもなく英雄でもない屈折のある人物・宗俊を、大河内が貫禄たっぷりに演じる。ラストの御用提燈の波も圧巻!

大河内伝次郎の歌舞伎顔がすごすぎる! 不正の河川工事がからんでいるあたりも、高尾トンネル工事問題などにも関心を抱いている昨今としては興味深かった。江戸言葉、しみじみと好きだ。いつもゆってるけど最も好きなのは「ざまあみやがれぃ!」といった罵倒言葉。江戸は、なのか、40〜50年代は、なのか、女の物言いが少なくとも映画の中では率直だなあと感動する。マキノ雅広監督作品は台詞や演技の切れの良さが大変快い。たしかにラストシーンの提灯の群れは映画的であった。

赤線最後の日 昭和33年3月31日

1974年(S49)/カラー/64分

■監督:白鳥信一/脚本:武末勝/撮影:山崎敏郎/美術:柳生一夫/音楽:鏑木創 ■出演:宮下順子、中島葵、芹明香風間杜夫、ひろみ麻耶、榎木兵衛、高山千草

赤線街のサロンを舞台に、売春防止法が施行される前夜の、娼婦と客との交情を哀歓たっぷりに描き出した佳作。<廻し>をして稼ぎまくる若くてドライな芹明香、初体験の青年を親切にもてなす中島葵など個々の女性の背景も丁寧に描かれ、深夜十二時になると<蛍の光>の合唱で締め括られるラストも印象的だ。

売春に関するデータなども示され、たしか月に180回お相手するという数字があったような。。さすがの私も?!これは無理だな、ヒリヒリするであろう。それで収入がたぶん現在でいって月1桁とか10万円程度なんだろうなと物価をみながら思った。現在でも月に180回相手して10万円なんてゆう人もいるんだろうか。1回555円。さすがにないか。映画のなかでは売春防止法によって新たな生き方が見つけられずに路上で泣き伏す女性もいた。

OL日記 濡れた札束ニュープリント

1974年(S49)/カラー/76分

■監督:加藤彰/脚本:宮下教雄/撮影:萩原憲治/美術:川原資三/音楽:樋口康雄 ■出演:中島葵、絵沢萠子、堂下かずき、浜口竜哉、賀川修嗣、高橋明、叶今日子

七十三年に起きた滋賀銀行女性行員による九億円横領事件をベースにした実録もの。ヒロインの転落の軌跡と、復興から高度成長期に至る日本の戦後史とを重ね合わせながら、悠然たるトーンで描き切った傑作。若い男に執着する中年女性の哀切極まる孤独感を表出させた中島葵が一世一代の名演をみせ、忘れがたい。

中島葵を拾ってみているわけではありません。社会的なもの+エロ、とゆうのが好みのためかな。「九億円横領」というのがすごい。女って哀しい。幸福をつかみかけている真っ最中が並行して描かれる。映画の最中、ちとヤバい観客を見つけてしまった。ロマンポルノやピンク映画も好きなんだけど、今後、見づらいなあ。安心がため、女性のどなたか一緒に観てくださいませんでしょうか。。

あとは、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』を2回観て以来、学生運動やその後の左翼やそのうち一揆や戦争といった歴史まで改めて関心が広がって調べたりしている今日この頃。そんな流れのなかで迷いつづけていた挙げ句にとうとう資本論にも挑戦することとしたが、その前に森達也さんの『死刑』を読んでいる。いっぽう、先日たまたま靖国神社近くを通ったので久方ぶりに入ってみたら春季例大祭。指定された場所から。同行の自称右で霊感のあるライターさんがいろいろ感じたことをおっしゃっていた。そこで購入した書物については『靖国』を観たときにでも触れたい。私がふだん思想の象徴として口にしている例は極端なので立ち位置についてなどはここでは触れませんし、右とか左とかは今はそんなに重要な区分ではなく、とにかく対話を重視し、2種の会合に参加しておりますんですはい。

最後に、あなたが読んでみたい本の企画があったら教えてください。もし企画が通ったら、一緒にスタッフとして参加してくださいな。今あちこち企画の持ち込みをおこなっていてワクワクするのですが、なんか構成やオチに迷いがあったりするのです。。