墓碑銘   今村昌平+ロマンポルノ×4

墓碑銘
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 こんばんは。画像をクリックしつづけるほどに画像は大きく育ちます。ところで。閑話休題。この1週間で映画を5本観た。加えてDVDも。

@ラピュタ阿佐ヶ谷
映画×温泉 湯けむり日本映画紀行
日常の煩雑さから離れ、ゆったりと湯につかって、身も心も癒される――。非日常世界の代表格・温泉は、幾度となく映画の舞台になりました。
ワケありカップルのおしのび旅行、みずみずしい恋物語、ドタバタ騒動、悪事・悪行、エトセトラ…。
立ちこめるいで湯のけむりに浮かぶは、まさに、人生裏おもて。特集『映画×温泉』どっぷりつかって、お楽しみくださいませ。
期間:07.06.10(日)〜07.08.04(土)
復讐するは我にあり

1979年(S54)/松竹、今村プロ/カラー/140分

■監督:今村昌平/脚本:馬場当/原作:佐木隆三/撮影:姫田真佐久/音楽:池辺晋一郎 ■出演:緒形拳三國連太郎ミヤコ蝶々倍賞美津子小川真由美

五人を殺害し、詐欺と女性関係を繰り返しながら逃亡を続けた主人公。彼の生い立ち、犯行、逃亡生活、そして別府鉄輪で温泉旅館を営む父との相克…。実際にあった連続殺人事件に基づく直木賞受賞作品の映画化。
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@シネマヴェーラ渋谷
官能の帝国 ロマンポルノ再入門

2007/06/02 〜 2007/06/22

スタジオシステムなき時代の最後のスタジオとして、無数のプログラムピクチュアを生産しつづけた日活ロマンポルノの作品群。映画通のあなたも、ロマンポルノ初心者のあなたも、是非ともこの傑作群を再見あれ。


『(秘)色情めす市場』
公開:1974年
監督:田中登
主演:芹明香花柳幻舟宮下順子萩原朔美、夢村四郎、岡本彰、高橋明絵沢萠子、小泉郁之助、小林旦
大阪のドヤ街、売春で弟を養いながら生きるトメ。モノクロの画面がワンピースを身にまとい、裸足で裏路地を彷徨うように客をとるトメの姿を幻想的に映す。同時に母親との関係に絶望し、お金と弟しか信じるものがない19歳の女の倦怠感、焦燥感も鋭く描いている。初めて弟と交わる場面ではカラー画面になり、神々しいまでのトメの表情、肉体が見るものに迫る。


『暴行切り裂きジャック
公開:1976年
監督:長谷部安春
主演:桂たまき、林ゆたか、山科ゆり、八城夏子、岡本麗、丘奈保美、潤ますみ、高村ルナ、梓ようこ、飯田紅子、森みどり、三川裕之、堺美紀子、田端善彦
ケーキ屋で働く男女。ある雨の夜、二人の車に乗り込んできた見知らぬ女が自らの肉体を傷つけ不敵に笑う…。人を殺さなければ欲情しなくなった男女。やがて男だけが暴走し始め、ケーキナイフを次々と血で染めていく。ロマンポルノには珍しく、快楽殺人へと駆り立てられる一人の男の生き様を描く。元々は気弱で女の言いなりになっていた青年が欲望を剥き出しにする様を林ゆたかが熱演。


『八月はエロスの匂い』
公開:1972年
監督:藤田敏八
主演:川村真樹、片桐夕子、永井鷹男、粟津號、むささび童子、しまさより、中野由美、堺美紀子、清水国雄
デパートの貴金属売り場で働く圭子は、勤務中に強盗に襲われ手を負傷してしまう。傷ついた彼女はヤケをおこし、寝たくもない上司と寝てしまい、元々退屈な関係であった恋人にも別れを告げる。そして彼女はあの日傷つけられた強盗の少年にもう一度会いたいと望んでいることに気付いてしまう…。むせかえるような熱気に包まれた真夏の海辺で不条理な女の衝動が暴発する。


狂った果実
公開:1981年
監督:根岸吉太郎
主演:本間優二、蜷川有紀、益富信孝、永島暎子岡田英次、小畠絹子、無双大介、鈴木秋夫、高瀬将嗣、翔野幸知、アパッチけん北見敏之、花上晃
昼間はガソリンスタンド、夜はピンサロのバーテンをし、ささやかながら幸せな生活を送るテツオ。ある日、自分勝手な令嬢・チカに出会い、惹かれあうが、生活の違いから互いを徹底的に傷つけあう。決して裕福ではない暮らしの中での早朝のランニング、鯉こくを作る姿を通し、力強い生命力に満ちたテツオを根岸吉太郎が繊細に描く。当時ヒットしたアリスの「狂った果実」に着想を得た、傑作・青春物語。

と、これをいっぺんに論じようという試み自体に無理があることは否めない、といわれそうだが、日活ロマンポルノよりも今村昌平のほうが濡れることは、あまり知られていない。ラピュタは常にあたしがほかの映画館のスタッフだったらまねしたくなるような味わい深い特集テーマをもうけ、心憎いコピーで我々を惹きつけてやまぬ。


この5本のなかで唯一愛せなかったのが、『暴行切り裂きジャック』。だったので、終わってからも考えてみた。たぶん、個人的に、人がみえなかったからだと思おた。リアリティが感じられず、真実に遠かったと感じてしまった。設定はいくらでもファンタジックだっていい。人物像がみえ、背景があり、共感があり、葛藤がなければ。快楽殺人・猟奇殺人に関心がなくはないのだが。


復讐するは我にあり』はその点、共感度が高く、犯罪をも否定しきれない気持ちであった。誰の誰に対する復讐なのだろうと考え、やはり、息子の父に対する復讐、というか、オイディプス王というか。オチは、お骨が宙で停止したということでしょうか。一生みてやると、それが最大の復讐なのだと。どうなのでしょう。


『㊙色情めす市場』は2度目だが、カラーへと変わったのは弟と関係した翌朝の鶏のとさかからと認識していたが、ちがったんだろうか。喜びを知ってしまった弟のみる世界、弟と関係してしまった姉の世界が変わってしまったことの象徴なんではなかろうかと思ったのだが、どうだっただろうか。


『八月はエロスの匂い』は反社会的でフォークグループを結成している若者が海で全裸で泳ぎ、浜辺で歌うのがよかった。圭子は傷ついて不条理な行動を重ねたのではなく、もともとの性癖だと思うがどうだろうか。


狂った果実』は女性陣が非常に魅力的だ。特に台詞。ラスト近くのシーンでは、「刺せ!殺せ〜!!」と心で叫んだ。この作品もかなり好きなほう。


というわけで、エキセントリックな女に目がない俺だが、女ってこえぇ〜!と感じずにはおれんかった。だが、身に覚えがなくはないような気もした。好きでない作品が見つかったことで、安心した。たぶん大切なのは設定ではない。というか、ロマンポルノは設定の都合上、女性の感情表現が肉体的欲望の表出?となっているのだろうと考えた。


だがしかし、究極のエロについて考えるならばそれは「寸止め愛好会」「Mっ娘倶楽部」会員としては(?!)、本命同士はヤりそうでなかなかヤらない『復讐するは我にあり』『㊙色情めす市場』のポイントが高い。現実世界においては本命とすべきですが。。ああ、あと、ほかの男とヤってるのを本命がみていて、女と男とは視線を合わせつづける、てのもけっこうたまんないけど、現実ではいやです。その経験に限ってはありませんが。ちなみにつきあうの定義を「ヤるかヤらないか」とTは断言した。あたしも無論、同感である(デートを重ねてもヤんなければ「つきあってない」、一晩限り、一昼限り(?)でもヤったら「つきあった」)。


ベストシーンは、『(秘)色情めす市場』とめが、屋上からちり紙をちぎって投げるところ。とめのやるせない気持ちが彼を前にしてあふれ出したように感じて鳥肌が立った。いかなる文化をも、気持ちがあふれ出す瞬間を表現しているところにぐっとくる。だって、あふれちゃうもんでしょ? ちがう?