あたしはいつまで放浪するのだろう

家の前のバス停から
乗り継いで
夕方までにできるだけ遠くへ行こうと思った


終点の長久保に広がる公園は
夜通し埼玉に向かっていたあの日の翌朝
階段に転がって眠り
うろついた場所だったあたしはあの頃より幸福だろうか
そんなことを考えていた


陸上自衛隊の訓練所を左手に進み
二度と会いたくない人が住む街から離れ
今川焼を頬張り
河とケシの花を眺めながら煙草をふかす


再びバスに乗り込んで朝霞台に出
途中単線の八高線(はちこうせん)に乗り
4時間弱で八王子に辿り着く


雨に濡れながら付近を散策し
駅前に戻る


わけもなく
家出したくて
たまらない
一人暮らしの
部屋にいるのに


いいあてられた気がして
枡野浩一さんの『結婚失格』を手にとった


マルで石窯ピザを食べながら
店員さんの親切に触れる


八王子温泉 やすらぎの湯に泊まり
眠れない夜をiPodと過ごし
泣き出したいほどのぽつんとした自由を思う


朝風呂に入り
デニーズのモーニングで
人それぞれの丁寧な朝を観察しながら読了
あたしも彼女のようなところもあるが
彼のようなところもあるが


いつまでも彼女が好きでしかたがなくて
どこまでもまっすぐに自分を追い詰める
そんな男の人が好きで
苦しかった


つづく