『三文役者のニッポンひとり旅』(殿山 泰司)読了。

 『三文役者のニッポンひとり旅』(殿山 泰司)は、はまぞうで出ない。出ないとうれしい。日本全国の旧遊郭を訪ねる旅。自分に対しても、「バカ! キチガイ!! クソジジイ!!!」と繰り返すのがたまりません(その感覚に「垂涎」)ハシ拳とはなんぞや。たれかおせえてたもれ。殿山泰司はジャズ好きで、好色旅行も忘れてジャズに耽ったりもする。memoコルトレーン『クル・セ・ママ』。フェリーニサテリコン』。敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花(本居宣長)。鶴田浩二『傷だらけの人生』。アルバートアイラーのラスト・レコーディング(三島由紀夫と同日に死去)。チックコリア『サークル』。「酔眼モウロウとしてオレを睨みつけやがる。ヘンな店に入ってしまったぜ。まアいいやどうにでもなれ。生まれたときからドウニデモナレなんだから。」コメット・タルホ。古賀春江。サルバドル・ダリ。マルトレーネ・デイトリッヒ。『そのヒイヒイとパトカーがとんでくるようなヨガリ声を出したりキチガイみたいにタタミをバリバリと破いたり、それがいいんだぞッ、どうしてそんなことがわからんのだ。ナサケナイにもほどがあるドメクラめ。どうせ女はね、この世に生をうけたときからキチなんだよ。キチガイキチガイらしくするのは当り前じゃねえか、なアそうだろうマダム』。ハドリー・チェイス(ハードボイルド)。「早くいうとオレは居候するためにこの世へ生まれてきたんだ。ゴクロウサマ!!」「(略)人生のいろんなことに関して、激しく憎み、激しく愛した人なんじゃないか、と。(略)愛と憎悪という両極端のものが共存する振り幅のとてつもなく大きな振り子を、殿山さんは持っている。その振り子が振り切れるギリギリのところで、殿山さんは全てを見ている。(中略&改行)僕は、そういう広く深く大きな殿山さんに憧れ続け、(後略)」内藤剛志さんの解説より。これがすべて。これ以上、私が申し上げることはございやせん。ひとつ申し添えさせていただくなら、揺らがぬ感性、この中身に惚れてます。