至福と生命の危機とが共存する「ブア・スパ」

 朝食を逃してはじめて遅めに起床。この日はスパへ行こうと電話するも、あたしの拙い英語では通じない。これではケアしていただくときに心配なのではという話になり、日本人スタッフのいるスパに電話。安心した上で、ぎりぎりに出発。ホテルの門で警備の兄さんにどこに行くのかと尋ねられ、僕はこんなに真っ黒になっちゃったけど君たちは日陰にいなさいといわれて待っていると(このちょっとしたユーモアが好ましい)、タクシーを捕まえてくれた。バンコク名物の渋滞に巻き込まれかけ、遅刻を覚悟。したとたんに想像よりも早めに到着。
 スクンヴィット線トンロー駅から徒歩10分に位置する「ブア・スパ」。豊富なメニューにキャンペーン価格。アオちゃんと別れてそれぞれの部屋へ。あたしは、まずは、ボディのスクラブで確執、否、角質を取り除き、シャワーを浴び、アロマのマッサージの後、再びシャワー。若めの姉さんが担当で、小さな足で踏ん張って、あたしがアンケートで「強め」好みとチェックしたからか、一生懸命マッサージしてくれる。しかし、鼻も胃腸もあちらこちらが弱めのあたしにとって、下半身、なかでもふくらはぎのマッサージは痛くて悲鳴寸前だった。その後、タイミングを得てクーラーを弱めてもらい、目にはシートがかぶされて、全身なにやら10重くらい、ラップが巻かれて行く。ドアが閉まる音。最初はよかったのだが、クーラーを弱めたせいで、暑くて暑くて、顔が痒くても掻けず、なおかつ何も見えない。20分間を幾度も自分のなかでカウントダウン。でも、暑い!皮膚呼吸できないせいか苦しい!!助けて!!!と何度も叫ぼうとしてはやめていると、ドアの音。あ!ようやく解放される!!と思ったのも束の間、またドアの音。あたしは気が狂いそうだった。こんなに手軽に「生命の危機」を体験できるのでおすすめしたいが、あたしはラップは二度とやるまいと心に誓う。なんとか命をとりとめ、シャワー。その後、花びらをたくさん浮かべた贅沢なフラワーバスを20分。
 ぬるくて何度も湯を足そうと思ったが、我慢して、花びらを足で胸元に集めたり、手や体で掬って、ロマンティックめろめろ気分。30分くらいたっぷり楽しんだところで、すみません。。の声。当初、フェイシャルだけ、「体は男の子だけど、心は女の子。でも、指名がよく入るほど人気。その人でいいですか?」と二度も確認され、「もちろんです!ぜひ、お願いします」とこたえていたあたし。きたきた。でも、ドアを開けない。そうか、あたしがあがるのを待っているんだなと、大慌てでバスローブを着る。
 部屋に戻って寝転ぶと、そのタイでいうところの「レディーボーイ(?)」サムさんは、困った顔をする。フェイシャルだが胸元までやるから、バスローブを脱いでくれとのこと。で、脱いで寝転ぶと、今度はスパ専用のパンツに手をかけられ、これもとっていいかときく。えっ?!ボディやシャワーのときにもはいたまま(シャワーをあがるたびに新しいものにはきかえ)だったのに?!と思ったが、彼を警戒して脱がないのかと思わせて傷つけたらイヤだから、軽く腰を浮かせて混乱のなかどうにか口にした自分のジョークのつもりの言葉「Preasent for you.」に、ごっつ自己嫌悪(だって、旅の最中ずっとアレで、マッサージ前に日本人のスタッフの方に伝えた、てのもあったしね。。)。でも、彼のフェイシャルは「痒いところに手が届く」魔法のようで、テクニシャンな彼にすっかりやられてしまったわけです。
 生まれ変わったような気分でトータル4時間。これを目当てに訪れる人もいるというフルーツジュースでリラックス。アオちゃんが出てきたとたんに危機についてを話し、パンツをいつ脱いだか尋ねると、シャワー後とバス以外は脱いでいないとのこと。謎である。