『腦病院へまゐります』若合春侑、読了後の覚え書き、のつづき

脳病院へまゐります。 (文春文庫)

脳病院へまゐります。 (文春文庫)

だいぶ月日は経ってしまいましたがな。
「尖った鉛(の旧字?)の針、鉛の雲丹(うに)、鉛の塊が躍動し險しく喉元を塞ぐ時、苦しい痛みの其の分だけ、私はおまえさまと一緒にゐるんだなアと感ぜられる。」
「『恥ずかしいもんか、にんげん、生まれて死ぬまでに無傷でいる者などいないんだ』」
「『(前略)頼りなくって、情けなくって、脆くて弱い神経は、にんげんとして生きている事を知らせるものよ、』」
解説(島田雅彦
「だが、死の欲動は死にたい欲求とは違う。(中略)死により近づいてみようとしているのである。」
情痴文学
谷崎潤一郎近松秋江、岩野泡鳴、葛西善蔵、嘉村磯多
「この本を読むものは微笑を浮かべながら、青ざめるがいい。」


人間の本質のある部分を描いているのだとは思う。それが過言なら、ある種の人間の本質のある部分を。運命的な一冊というほどの感慨ではないが、下腹をぐちゃぐちゃに掻き回されるような感覚を突きつけられたようには思う。