ヤマトカワトソラトカヌー

 三週目には、栃木へと足を運んだ。行きの電車中では、本を読んだり、景色を眺めたり、眠ったりを繰り返しているだけで、幸福感を味わった。仕事をしたくてもできない空間。それこそが、「自由」だ。などと思ったりした。東京を少々離れればあっという間に風景は横長になり、田園が広がり始める。ごく狭い範囲の都会だけが、あんなに窮屈になっているのだ。あっという間に宇都宮へ。仕事仲間の夜宵に会う。彼女はすでに僕好みの「純喫茶」を物色してくれており、駅前の焼き肉屋のような名前の純喫茶に入ってみることにする。そこで、僕は日替わりランチの焼き肉定食を、夜宵はナポリタンをオーダーする。これから会う友人について説明しながら、幸福について考える。
 夜宵と別れ、隣の駅の雀宮へ。駅前まで小百子が迎えに来てくれる。家にいるとプールから帰ってきたご主人の鮠深さんと、息子のアラシ、娘のアヤカが帰ってくる。


疲れたので、省略させていただくと、アラシは僕のことを覚えてくれており、アヤカは僕の服装や声が可愛いと言ってくれ、傍を離れない。「一緒に寝よう」と繰り返す。風呂を借りようとすれば、二人はパッと脱いでしまい、母が宥めたりしていた。僕はずっと二人と遊んでいたのだ。
 興味深い絵本を見せてもらった。
 翌日には那珂川まで行き、4度目くらいのカヌーをした。でも、実は5、6年ぶりであって、最初はまったくコツが思い出せず、グルグルと同じところを廻っていた。センセイのスパルタな指導を受け、ガンガン漕いだが、あっという間に疲れ、筋肉痛に。それでも3度ほど挑戦した。途中、疲れて空を眺めながら浮かんでいるだけでも心が大空に広がって溶けていく。灼けた肩が未だに痛痒く、筋肉痛でまだ歩き方がおかしい。