恋愛物語 第2回
昨夜遅くまで仕事をしていて、熱帯気候のロフトで大汗をかきながらも、僕は起きあがることができなかった。ようやく昼前に重い身体を引きずりながら、なんとか起きだした。
仕事にかかわる雑多で面倒で気が重い作業を次々とこなし、腹ごしらえをして郵便局へ。ふみの日切手を購入し、冊子を小包で出す。ぐちゃぐちゃの頭のまま煙草を自販機で買い、家に戻って黙々と原稿を作成したり、メールの返事を書いたりする。そしてふと、今月もまたしても家賃を月内に払えない状況、時間帯であることに気づき、とりあえず夕方の5時まで作業を続け、シャワーを浴び、再び5時半に出ることにする。BGMはWorld Standard『音楽列車』。カミュに借りてケースを割ったが気に入ったこともあり、購入予定。
吉祥寺へ向かう。VILLAGE VANGUARDの品揃えに弱い僕は、いつまでも店を離れられない。そこでうわさの本のページをめくると、「本当にそれはほしいものなのか」とかなんとか書かれており、さらに悩む。結局、ジョルジュ・バタイユがオーシュ卿という匿名で1928年に地下出版された小説『〈初稿〉眼球譚』の文庫
- 作者: ジョルジュバタイユ,Georges Bataille,生田耕作
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/05/01
- メディア: 文庫
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くぐつ草はいつもよりも明るめな気がして、まずは冨子の仕事での非常に貴重な体験を聞く。あり得べからざる結婚式の話。冨子の友人の父に取材したい話。そして、僕の格闘、屈辱、互いの安易な反省と葛藤について。
僕は帰り際に、フリーのCD-Rをもらってきた。それを手にしながら、これは良いアイディアだと盛り上がる。印刷の手間が省け、写真の画像を調節しすぎずに載せることもできる。では、第1号を12月(冬)号として、タイトルは『同人誌』もしくは『射手座同盟』もしくは『バリナイト』とし、テーマを「恋愛物語」もしくは「ロマンティシズム」などとしてはどうか、と。参加希望者からは500円を徴収し、8月に打ち合わせ、9月末に原稿締切、10月に編集作業、11月から配布というのはどうかと。
「あぁ、やりたいことがいっぱいだ」「働いてる場合じゃない」と気ばかりが大きく夜空に拡散していった。
今夜は冨子とは、駅前で別れた。彼女は自転車に跨った。僕はいつものように、冨子の後ろ姿をそっと見送った。(つづく)