『美少年』団鬼六

美少年

美少年

 kab氏によれば、誰もが通る道だと云ふ。今、鬼六がアツイ(あたしのなかで)! イタイ。えぐられるように。鬼六の根っこはM。S的に人を傷つけるが、傷つく人をみると、その痛みを深く感じる。「人を、愛する人を傷つけた」。そこから得られる自分への疵。M。あたしは、Mっ娘同盟と、寸止め倶楽部の会員ですが(爆・会員3名)、根っこはたぶんS。あたしを傷つけた人が、痛みを感じるその姿に(単なるあたしの妄想の場合もありますが)快さを求めるといったらいいすぎだが、その姿を求めるのやもしれず。だから、自分を(実は意図的に)傷つけさせることがなくはないのやもしれず。あなたはSですか? Mですか?
 「不貞の季節」は、鬼六が、妻の浮気相手にその様子をつぶさに語らせるといふもの。「美少年」は、鬼六と美少年のラヴ・ストーリーだが。。
 「鹿の園」は、「人間の悪徳な行為も背信的な行為もこの自然界にとっては大いに役立つもの、というサドの言葉にそこで思い当たるのである。」サド、読みたいが、昨日も買うのはやめてみた。マゾッホの有名な被虐小説『毛皮を着たヴィーナス』のワンダ・フォン・ドゥナーエフ夫人。
 「妖花」は、谷ナオミ物語。なんでラピュタの特集、見逃したんだろう? 口惜しい限りである。「情に厚くて勝ち気であり、口に飾りっけはないが、人の面倒を見るのが好き」「男にはなかなか惚れないが、一旦、惚れてしまうと相手が極道であれ、何であれ、もう手がつけられぬ」。金を鬼六に預ける「『だって銀行は知らない人ばかりだもの』」。篠山紀信を知らずに彼をテストしたことを詫びたところ「ま、一緒に仕事をすれば何時かはわかってくれるだろうと思って、と彼は呑気な事をいうのである。」「年配の刑事は、取調べ中、気づいたのですが、いや、谷ナオミという女は実にいい女ですな、といった。そうでしょう、あの女はおっぱいといい、腰廻りのなよやかさといい、官能味がムンムンとして、肉体派女優として最高だと思いますねというと、年配の刑事は、いや、取調べの最中に彼女の肉体検査なんか致しませんよ、と当惑したような表情をしていった。(改行)あの女は懸命になって山岡を庇い続けると刑事はいった。」「その席上でもナオミは、何がうまいといってブタ箱から出てすぐに喰べた寿司の味に勝るものはないといって笑っていた。」「ナオミの運命は下降すると思えば急に上昇の機運をつかみ、たえずジグザグの波型を作っているようだ。」「本人は決してマゾヒストではないのですが、S的趣味を持つ男性を誘発する何かを持っている女ではあり、」「渥美(清)さんは(中略)むしろ、近所の人達の生活体験というものを聞きたがった。寿司屋やソバ屋の出前持ちの苦労話などを好んだ。そして、彼は聞き上手で、成程、わかる、わかる、とうなずき、次には面白い合いの手を入れて一座をわかした。」「モデルが解放されて天井から畳の上に降り立つと渥美さんは近づいて『ご苦労さんでしたね、痛くはなかったですか、お嬢さん』といたわりの言葉をかけ、モデルの手にセンベイを握らせていた。」「ナオミ主演の日活ロマンポルノ、十五本の内、私はこの『縄と肌』が一番、鮮明に記憶に残り、鉄火姐御となったナオミの妖艶さ、拷問シーンの凄絶さ、ナオミの最後を飾る傑作だと思っている。」「ほんとに渥美さんは舞台の踊り子とか、ポルノ女優なんかに優しい眼を向ける人だった。」ナオミの結婚、カラオケ教室の経営と崩壊、スナックの繁盛、バイク事故で長期入院、夫の遊蕩とナオミのノイローゼ、離婚。「『だから、私ね、決心したの。もう二度と男は作らないって。私と一緒になった男が可哀そうになるのよ。私は一人で生きて行く方が似合っているわ。その方が幸せになるのよ。』」藤淳子の緋牡丹博打♪鉄火意気地も しょせんは女  濡れた黒髪 緋牡丹ゆれる  女の 女の 女の未練  更けて夜空に 星も散る   「誘われるように私はふらふらとナオミの横に立ち、泣きたいような懐かしさで彼女と一緒に唄い出していた。」