添えもの映画百花繚乱 SPパラダイス!!

「娯楽の王様、イコール、映画」
そんな時代だからこそ存在しえた中篇映画の数々、
ここに乱れ咲き!

1952年、松竹が「シスター映画」なる中篇映画の製作をスタート。上映時間4、50分の作品で、これを併映作にして二本立て封切りが行われました。呼び名は姉妹篇を意味するSister Pictureからきており、略して「SP」とも。


好人物の夫婦

1956年(S31)/東宝/白黒/50分

■監督:千葉泰樹/脚本:八住利雄/撮影:山田一夫/美術:中古智/音楽:伊福部昭 ■出演:池部良津島恵子、青山京子、石原忠、滝花久子、有島一郎東郷晴子

『鬼火』に次ぐ東宝の“ダイヤモンド・シリーズ”第二作。葉山の海岸近くに住む日本画家・池島と妻とし子。祖母の看病のためとし子が長期間家を空けることになり、池島は若い女中とふたりっきりに…。


1957年(S32)/東宝/白黒/66分

■監督・脚本:山本嘉次郎/原作:福田三郎/撮影:小泉一/音楽:渡辺浦人 ■出演:榎本健一、安西郷子、河内桃子小林桂樹、小杉義男、堺左千夫

大平洋戦争末期。上野動物園では来るべき爆撃にそなえて、猛獣を毒殺することが決定した──。子供たちの人気者・象のトンキーと、飼育係・善さんの交流を中心に、戦時下の動物園で起こった悲しい出来事を真摯に訴える感動篇。
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『好人物の夫婦』はいい意味で裏切られた。しゃあしゃあとしている池島だが、とし子が2カ月家をあけても、今が乱れることのほうをおそれて過ちをおかすことはなかった。なるほどタイトルに膝を打った。『象』は、教科書によってはじめて戦争を実感する、あの物語だ。善さんの人物像や街の人々の様子がていねいに描かれ、その実感はいっそう深くなる。動物たちの名演技にも心が震える。かのしとに贈ったひとつの昭和復刻のグラスで善さんが酒を飲んでいた。やっぱりあたしも、このグラス、買おう。