『百』(色川武大)

百 (新潮文庫)

百 (新潮文庫)

リリー・フランキーさんの『東京タワー』とはまたちがった家族のありようをみせてくれる一冊。気になるフレーズに紙片を挟み始めたら、ほぼ全ページにわたってしまった。当時のワルの巣窟(?!)浅草に弟を引っ張って行く、そんな兄弟関係、親父との確執や動物の幻覚、そして、老後の親父とそれにまつわる家族との関係を、常にヒリヒリとみせる。父は「トンマなピュリタン」、母は「愚鈍なリアリスト」、自分は「トンマで愚鈍なナルシスト」だといい、だが、親父の底には「具体」があると確認する。家族というものに対して何事かを思い、抱えつづけている、つまりはすべての方に。