『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』リリー・フランキー

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

後半夜を徹しての一気読みちうやつを、久々にやってまいました。ノンブル449-215で234ページ分だな。名シーンとかでなく、印象に残った文字面をピックアップ。物語としておもしろいので、とにかく騙されたと思って読みなさい!


「孤独は、その人の感傷を気持ち良く酔わせ、漠然とした不安は、夢を語るにおいて一番必要な肴になる。(改行)ひとりで孤独に苛まれながら、不安を携え生きている時。実は何にも恐れてはいない時なのであり、心、強く生きている時なのである。」「まだ、なにも始まってはいない。自分の人生の始まるべきなにか。そのなにかが始まらない苛立ち。動き出さない焦り。」「本当の孤独はありきたりな社会の中にある。本物の不安は平凡な日常の片隅にある。酒場で口にしても愚痴にしかならない重苦しくて特徴のないもの。」「東京でも田舎町でも、どこでも一緒よ。結局は、誰と一緒におるのか、それが大切なことやけん。」


「ない袖は振れない。ノースリーブはどれだけ伸ばしても長袖にはならない。人生色々、仕事も色々だということを知っているのなら、孤独な老人や病人、低賃金労働者に対する違うかたちのなにかを作れ。増やせ。年金かすめ取って造ったホールでロックのコンサートなんか聴いても興醒めするだけなんだから、そんなものは潰して配れ。」


「(前略)感情のバランスはちぐはぐで、どこかがいつもちりちりする。腰のあたりから喉のあたりまで、砂が詰まったような息苦しさで気持ちが滅入る。(改行)夜、ひとりになってからその感情と対峙することに耐えられず、毎晩飲み歩いた。煩わしいこと、恐ろしいことから逃避するために、友だちを呼び集めて矢鱈と飲み続けた。」


ウサギを可愛がるオカン、斉条史朗「夜の銀狐」とその歌詞。


葉祥明「母親というものは」
(前略)
母親というものは
実に本当に無欲なものです
だから母親を泣かすのは
この世で一番いけないことなのです


とにかく読書の愉楽を満喫させてくれる一冊であった。昔は好きだったけど最近のリリーさんはいまいちなどと思っていたこともあったが、自分と人とが生きることに対して誠実なその姿勢にとっても好感をもった。ダメ時代ももちろん含め。2カ所決定的な感じで泣いてしまった。そして、このオカンを超えられるおなごは難しいだろうなぁなどと、他人事ながらに思ったりもしつつ。あたしは「ときどき」のオトンが好きす。で、親のことなどを考えながらこんなんを読んでしまうと、自分の人生全般、なんてものに思いを馳せてしまったり、相田みつをを見直したりする単細胞なオレす。とにもかくにもユーモラスに自分を外からどうしてもながめてしまいがちなリリーさんが好きす。


ただし、今また古井由吉野坂昭如の本を読み出し、ドロドロでほってもほっても金なんて出なくってドロドロな、この人生をおもしろくおもったりもするわけなんである。


今日は仕事の懸念事項を現時点で最善と思われる方法でわりと片づけまくったので、あとはゆるりと過ごします。おやすみなさい。会費1,000円から、フリーペーパー『同人誌』、会費無料からバンド、ご参加ご希望の方は、ご連絡ください。詳細はアレコレ考え中ですが。。まさに「夢の肴」満点です。