作者: チャールズブコウスキー, Charles Bukowski, 山西治男

の気になるちぇっくのつづきから。

「めちゃくちゃ疲れる仕事だった。疲れて、辞めたくなって、でもまた疲れ果てて、辞めるのも忘れちまって、時間が一分も動かなくなって、一分の中に永遠が生きてるって心地になる。」『この手に突き刺さったとげは、血管の中を通って心臓まで行くんじゃないのかね』「一瞬、おっさんを連れていこうと思ったけど、自分のことで精一杯だなって思った。(改行)おれは、あの小さな街の人を喰いものにする連中のところへおっさんを置き去りにしてきたことが心に引っかかっていた。おまけに、おっさんの奥さんが別れた旦那を思うときもあるんはないかと思ったりもした。いや、そんなことは十中八九ないな、と思いかえしたりもした。いや、たとえあったとしても、おっさんが奥さんを思い焦がれてるように、旦那のことを思ったりはしないだろう。世界中が、おっさんのように哀しく傷ついた人間でうじゃうじゃしてるんだ。」「幾晩か前、おれは寒さを感じると、手に刺さったとげが疼きはじめてるのに気づいた。どこに刺さっているのかがわかった。」と、あとラストまで、大好きな作品です。(二人の大酒呑みの酔っぱらい)
「一曲目は『オールド・マン・リヴァー』、二曲目は黒人霊歌の『誰も知らない私の悩み』、それから『セントルイス・ブルース』を唄い、つぎに何回か中断したり、笑ったりしながら『アメリカに祝福あれ』を唄った。」曲が気になる(男)
「『えらく強い相手と闘ったんだよ、ミスター・ヘミングウェイ』とだれかがこたえた。(改行)おれは、服を着終わると、へミングウェイのベッドまで歩いていった。『いい試合だった、パパ。全戦全勝なんてやつはいないよ』おれは握手した。『自分の頭を撃ち抜かないででくださいよ』」(上流階級のオンナ)
「つまり、女というものは基本的に狂っているという結論だった。」「先生によれば、女は腺に命じられて動き、男は心臓に命じられて動いていた。」あと、列に並ぶのが耐え難い話(ドクター・ナチ)
『ローラースケートを履いたキリストさ、いろいろと広がる可能性がいくらでもあるぞ』(ローラースケートを履いたキリスト)
「ランダルは唯我独尊を決め込む呑んだくれで無骨で辛辣な男として知られていて、書く詩も洗練されていなくて、そのうえ単純で野蛮なものだった。」「だが、ランダルは何も書かず、『おれは深いブルースの気分の、単なる配送係にすぎない』と口ぐせのようにいうのだった。」(赤鼻の配送係)
「みんなが口をそろえていうように、おれは善人じゃない。善人なんて言葉はおれの辞書にはない。おれが敬愛するのは、悪人、アウトロー、クソバカ野郎だ。きれいにヒゲを剃って、ネクタイを締め、体(ルビ:てい)のいい仕事をしてるやつなんて好きじゃない。破滅的なやつが好きだ、歯はへし折れ、心もぼろぼろで、生き方も目茶苦茶な男が好きだ。そういうやつに魅(ルビ:ひ)かれる。まったく驚異と爆弾が詰まっている人間だ。」「(精肉工場で働き〜)アパートに戻ろうとしてバスに乗って初めて、他人の鼻がうごめきはじめ、うす汚い格好をしたおれはふたたび、心の底から恥ずかしいと感じはじめた。それが人生のはげみというやつだった。」(ガッツ)
「最も屈強な男でも罠にはまってしまう。地上をかつて歩いた神のように。」「朗読会の前にはいつも吐いてしまう。幸先がいい。神経が苛立ってきた。坂道を上っていると、ナイフが腹の中にあるみたいに、チクチク、グサグサしてくる。」「敵意をもつことはいいことだ。頭の中がまとまらなくなるから。」(こうしてディラン・トマスは殺された)
「作家はどんなやつだって自由な形に組み立てられるティンカートイのおもちゃの魂をもっているもんだ。作家といっしょに部屋に入れば、それがわかる。」「ウ゛ィッキーと坐っていると、そのバーをめちゃめちゃに壊したくなってきたら、そんな気持ちをウ゛ィッキーに話した。」『一般大衆は幸せだ。どれを取っても楽しいものばかりだ。(中略)多くを期待しているわけでもなく、なんかすごいものが手に入るわけでもない。やつらはすごい集団だよ。』『人間は破滅的にならないために、知識人になるんだぜ』『恐れているから、知識人になるんだよ。破滅的だからじゃない』『本当にこの女には驚かされる、まあ、おれにも少し運がめぐってきたんだ、と。それから、(後略)』(首なしの最低野郎)
『全部呑んじゃえよ』「そう、四方の壁が必要だ。しっかりと四方を壁で囲ってあれば、そのうち世界が手に入れられるかもしれない。」「よた話でもして、ワインをあおる。二人とも肝っ玉は小さかった。だって、まだ死にたくはなかったから。悲惨な人生も御免だったけど、まだとりあえず生きていたかった。」(死人はこんな愛し方をする)
「哀しみを楽しく味わうためにっていうやつだ。痛みがない詩人になにができるというんだ。タイプライター同様、心の痛みが詩人には必要なんだ。」(はさんだ紙を抜いたらどの話かわからなくなったので、万が一気づいた方は教えてください。)
「BUK(ブューク)の墓碑銘には、「ガンバルなよ」(“DON'T TRY”)と刻まれていますが、」これは以前、某ジャズメンのライヴのMCで聴いてましたです(ある誤訳翻訳者の三つの告白とあとがきモドキ)

とりあえずいつもの作品が短くいっっぱい集まったような短編集でしたが、チクチク、グサグサ刺さる描写やストーリーが多かった。またほかのも読もと。